『業界再編前夜』『大企業の新規参入激化』の介護業界

介護業界は2000(平成12)年の介護保険制度スタートから16年目に突入しました、2014年を振り返って、「業界再編前夜」ともいえる1年であったように思います。トヨタグループ(トヨタすまいるらいふ・ハウスメーカー)、小田急電鉄(鉄道)、大京(マンション開発)、綜合警備保障(ALSOK、警備)、アシックス(スポーツ用品メーカー)、アドアーズ(アミューズメント)、積水化学(住宅カンパニー)、オーイズミ(飲食店経営)、桧家ホールディングス(住宅開発)等々、誰もがその名を知る大企業の介護事業に対する進出・拡大が著しく目立った1年となりました。一方で、HCM、アズビル、アルプスの杜(アルプス技研)、茶話本舗、ヘルシーサービスといった長らく介護業界M&Aの世界においては長らく「買い手」として認知されてきた企業が異業種から介護事業に新たに参入してきた企業、もしくは積極的な拡大意欲を示す企業に経営を託す、もしくは経営を承継するような事例が印象的な1年でもありました。弊社においても医療・介護業界におけるM&A成約件数は平成24年10件、平成25年12件、平成26年16件と右肩上がりに推移しており、そのニーズは拡大の一途をたどっています。

介護報酬改定は『経営課題』においては『氷山の一角』

更に今年に入って平成27年度介護報酬改定の詳細が発表され、大半のサービスの基本報酬が引き下げされた一方、中重度の要介護者や認知小高齢者への対応を評価する各種加算の方針が示されました。今後は介護事業以外に、収益力のある本業を抱えている企業や介護保険以外に売上を確保できるような複合サービスを提供できる企業はそのダメージを軽減できる術もありますが、小規模かつ単体介護サービスを提供しているような事業者にとっては非常に危機的な状況になったといえます。然しながら、今回の「介護報酬の改定」は極めて重要なポイントではあるものの、医療・介護業界の経営者が抱える「経営課題」においては「氷山の一角」に過ぎません。後継者問題、施設の老朽化、人材確保難、先行き不安(将来不安)、選択と集中、異業種からの競合の登場等々、様々な問題を抱えています。次回以降では、数回にわけて今後の介護業界におけるM&Aの動向を探りつつ、譲渡や買収を判断する経営者がその時々で何を思い、何を考え最終的な決断を下すのかをM&Aにおける最前線の事例を交えて紹介していきたいと思います。

高齢者住宅新聞2月25日号から一部転載
AUTHOR PROFILE

営業本部 医療介護支援部 部長

谷口 慎太郎

大手金融機関、投資銀行を経て2009年に日本M&Aセンターに入社。医療・介護を中心としたヘルスケア領域での投融資やM&Aを数多く手掛け、これまで関与したM&A成約実績は50件を超える。主宰する医療・介護M&Aセミナーでは、現場経験に基づいた講演が毎回好評。最新の業界動向・M&A事例やスキーム解説など、ヘルスケア関連雑誌への寄稿も多数行っている。