今回は、病院と介護老人保健施設のM&Aのお話をご紹介させて頂きます。

今現在、実は介護系施設よりもM&Aのご相談が多いのが医療法人(病院)の譲渡の相談です。

但し、医療法人は上場ができませんので、M&Aが無事に成約されても新聞に発表されるようなことはありません。そして、多くの方が誤解をされている事があります、M&Aをするような病院は経営が厳しいんだろう、なんて話しをよく聞きます。では実際どうなのか?ということなのですが応えは「NO」です。経営が苦しい病院も当然ありますが、弊社に譲渡相談に来社されるほとんどは健全経営かつ収益性も優良な病院が非常に多い、これが事実です。

今回ご紹介させて頂く医療法人の理事長様のご年齢は当時75歳でした、高齢でしたが頭脳明晰で非常にお元気、まだまだ立派に経営をされるんだろうな、というのが私の第一印象でした。さらにこの医療法人は銀行からの借入がそれなりに残っていたものの、キャッシュフローは2億円近く計上しており返済も順調に進んでいることから経営そのものは順調といっていい状況でした、更にご子息は医師ということで表面的には何の問題もないように見えました。然しながら、よくよくお話を聞いてみると肝心のご子息は大学病院に勤務しており脳外科が専門で活躍されており、慢性期医療が主体のこの病院を継承する気はないとのこと。困られた理事長は随分も前から地元の医師会で承継話しを直接もちかけたり、院内の院長や副院長にも打診をしたようですが敢え無く断られてしまいました、なぜなら創業者理事長が30年以上積み上げてきた出資金を買い取る資金は雇われのサラリーマン医師には難しい問題であり、数億円の借入の個人保証を行う事も非常に高いハードルなのです。これは、決してこの医療法人の問題だけでは決してありません、先に述べたように日本全国の優良医療法人の多くがこの「後継者問題」を抱えています。息子が継ぎたくない、継がない、No2や3の院長・副院長が継げない、そのどちらも「後継者問題」です。

最終的には、この医療法人は非常に健全な経営体制を高く評価してもらい無事に大手の医療法人グループに承継されることになりました。成約から1年後、理事長は名誉院長という形で勤務医で診療を継続されてましたが、ご病気で倒れられたとゆう事を電話で我々は知りました。しかし、承継した医療法人グループからのバックアップがしっかりなされていた事もあり、医師の確保等で混乱をきたすことなく、現在も順調に経営が行われているとの事です。もし、このM&Aが1年遅かったら医療法人の命運はまったく違ったものになっていたかもしれません。理事長のご英断が病院で働く従業員や患者を救った非常に素晴らしい例であったと思います。

 

※高齢者住宅新聞8月26日号から一部転載

AUTHOR PROFILE

営業本部 医療介護支援部 部長

谷口 慎太郎

大手金融機関、投資銀行を経て2009年に日本M&Aセンターに入社。医療・介護を中心としたヘルスケア領域での投融資やM&Aを数多く手掛け、これまで関与したM&A成約実績は50件を超える。主宰する医療・介護M&Aセミナーでは、現場経験に基づいた講演が毎回好評。最新の業界動向・M&A事例やスキーム解説など、ヘルスケア関連雑誌への寄稿も多数行っている。

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