今回ご紹介するのは、秋田県にてショートステイ、グループホーム、小規模多機能施設を複数展開する企業の事例です。ご相談頂いた企業の経営者は年齢70歳を過ぎていましたが、健康状態も良く、業績も黒字経営を推移していました。

結論から申し上げると、最終的には近隣の岩手県において東北No1の介護事業者を目指す中核企業様が相手となり無事成約の運びとなりました。

今回の企業は順調な経営実績があること、ショートステイやグループホームといった既得権性が強い施設を展開しているという特徴を有しており、弊社も自信を持って相手探しを開始しました。ところが、相手探しをする中で弊社は大きな課題に直面することになります。

それは提案に伺ったいくつかの候補先から「我々は東北への進出であれば仙台しか想定していない」という意味のことを何度か説明をされたのです。実は、今回ご相談頂いた経営者には子ども(息子)がいました、しかも、他県で介護ではない事業を経営する経営者でもありました。当然、子どもに相談をしたようですが事業の承継に対しては「No」であったことから弊社に相談を頂いたというきっかけがありました。

これらが何を意味するかというと、地方企業の事業承継問題は大きく分けて2つの課題があります。

1つ目「地方の後継者不在問題」

これはよく誤解されがちですが、日頃から企業と密接な付き合いのある金融機関や会計事務所ですら気づきにくいことがあります。それは「息子がいる=後継者は大丈夫」と短絡的に判断してしまう傾向にあるということです。
この秋田の経営者のように、優秀な息子がいても、その息子が、親が経営している事業に興味を持てなかったり、そもそも「郷里」に帰るモチベーションを持てなかったりすることで「後継者不在問題」は発生しているということです。地方になればなるほどこの傾向は顕著です。

2つ目「人材不足問題」

先に記載しましたように、企業の譲受手となる企業の中には将来的な人口動態を先読みして進出エリアを選別し始めている企業が多くなってきています、そのような企業がもっとも懸念を示すのは利用者がそこに存在するのか?ということも勿論ですが、利用者にサービスを提供する「人材」を確保できるのか?という不安にあります。

今後、地方の人口問題は更に深刻化していきます、M&Aは後継者問題の解決だけではなく、「雇用を維持する」という大切な意味があります。是非、問題解決の一手段として活用して頂きたいと願っています。 次回も引き続き事例をご紹介させて頂きます。

 

※高齢者住宅新聞から転載
AUTHOR PROFILE

営業本部 医療介護支援部 部長

谷口 慎太郎

大手金融機関、投資銀行を経て2009年に日本M&Aセンターに入社。医療・介護を中心としたヘルスケア領域での投融資やM&Aを数多く手掛け、これまで関与したM&A成約実績は50件を超える。主宰する医療・介護M&Aセミナーでは、現場経験に基づいた講演が毎回好評。最新の業界動向・M&A事例やスキーム解説など、ヘルスケア関連雑誌への寄稿も多数行っている。